トゥーレーヌのワインを扱うにあたり、現地の政令を調査、翻訳してみました。
辞書的な使い方ができれば、と思って公開しております。
それと、流石に必要になることはないだろうという部分は省いております。
よろしければご参考ください。
- はじめに
- I. – 呼称の名称
- II. – 地理的名称および補足表示
- III. – 色と製品のタイプ
- IV. – 各種作業が行われる地域および区域
- V. – ブドウ品種(Encépagement)
- 1. – 使用品種(Encépagement)
- ◉ AOC「Touraine」
- b) 特別規定(disposition particulière)
- ■ 「gamay」表示のあるワイン(indication gamay)
- ■ 「primeur(プリムール)」または「nouveau(ヌーヴォー)」表示の赤ワイン
- ■ ロゼワイン(スティル・スパークリング両方)
- ■ 白のスパークリングワイン
- ■ 「Amboise(アンボワーズ)」
- ■ 「Azay-le-Rideau(アゼ=ル=リドー)」
- ■ 「Chenonceaux(シュノンソー)」
- ■ 「Mesland(メラン)」
- ■ 「Oisly(ワズリィ)」
- 2.- 栽培面積における品種構成比率(Règles de proportion à l’exploitation)
- AOC「Touraine」
- 地理的補足名称別の比率規定
- 共通規定(全AOC Touraineに共通)
- VI. – ブドウ畑の管理方法
- VII. – 収穫、輸送およびブドウの成熟度
- VIII. – 収量および若木の収穫開始年
- IX. – 醸造、熟成、瓶詰、保管に関する規定
- 1° – 一般規定(Dispositions générales)
- a) 品種のブレンド(Assemblage des cépages)
- 2° – ワインの種類ごとの規定(Dispositions par type de produit)
- a) 「primeur(プリムール)」または「nouveau(ヌーヴォー)」表示付きの赤ワイン
- b) スパークリングワイン
- c) 「Amboise」地理的名称付きの白・赤ワイン
- d) 「Amboise」「Azay-le-Rideau」のロゼワイン
- e) 「Azay-le-Rideau」の白ワイン
- f) 「Chenonceaux」の白ワイン
- g) 「Chenonceaux」の赤ワイン
- h) 「Oisly」の白ワイン
- 3° – 瓶詰に関する規定(Dispositions relatives au conditionnement)
- X. – 地域との関連性(Lien avec la zone géographique)
- XI:移行措置(Mesures transitoires)
- XII:表示ルール(Présentation et étiquetage)
- CHAPITRE II – 申告義務(Obligations déclaratives)
- CHAPITRE III – 主な検査ポイントおよび評価基準(Points principaux à contrôler et éléments à justifier)
- 参考文献
- おわりに
はじめに
この文書は、「CDC – Touraine.pdf」(2025年4月24日官報掲載)「トゥーレーヌ」の公的仕様書を訳したものです。
できるだけ間違いないように訳しておりますが、もしかしたら翻訳間違いなどもあるかもしれませんのでご留意ください。
I. – 呼称の名称
1939年12月24日付の法令(スティルワイン)、および1946年10月16日付の法令(スパークリングワイン)によって認定された「トゥーレーヌ(Touraine)」原産地統制呼称(AOC)の名称は、以下に定める特定の規定に適合するワインのみに付されることができる。
II. – 地理的名称および補足表示
1.本仕様書で定められる規定に従い、AOCの名称には必ず「ガメイ(gamay)」という表示を付すものとする。
2.AOCの名称は、以下の地理的補足名称のいずれかで補足することができる。ただし、これらの名称を表示するためには、本仕様書に定める生産条件を満たす必要がある:
- 「Amboise(アンボワーズ)」
- 「Azay-le-Rideau(アゼ=ル=リドー)」
- 「Chenonceaux(シュノンソー)」
- 「Mesland(メラン)」
- 「Oisly(ワズリィ)」
3.AOCの名称は、「primeur(プリムール)」または「nouveau(ヌーヴォー)」の表示で補足することができる。ただし、本仕様書に定める該当の条件を満たすワインに限る。
4.AOCの名称は、「Val de Loire(ヴァル・ド・ロワール)」という地理的表示で補足することができる。使用に関するルールは本仕様書内で定められている。
III. – 色と製品のタイプ
各AOCおよび補足表示におけるワインの色およびタイプは以下の通り:
表示名 色・タイプ
・AOC「Touraine」
白、赤、ロゼのスティルワイン、および白とロゼのスパークリングワイン
・AOC「Touraine」+「primeur」または「nouveau」表示
赤ワイン(スティル)
・「gamay」表示
赤ワイン(スティル)
・地理的補足名称「Amboise」「Mesland」
白、赤、ロゼのスティルワイン
・地理的補足名称「Azay-le-Rideau」
白およびロゼのスティルワイン
・地理的補足名称「Chenonceaux」
白および赤のスティルワイン
・地理的補足名称「Oisly」
白のスティルワイン
IV. – 各種作業が行われる地域および区域
a) 一般的地理的区域
ブドウの収穫、ワインの醸造、製造、およびスパークリングワインに関しては、収穫・醸造・製造・熟成・瓶詰めの各工程は、以下の自治体(2024年版公式地理コードに基づく)において行われる:
・アンドル=エ=ロワール県(Indre-et-Loire)
Amboise、Anché、Artannes-sur-Indre、Athée-sur-Cher、Avoine、Avon-les-Roches、Azay-le-Rideau、Azay-sur-Cher、Beaumont-en-Véron、Benais、Bléré、Bossay-sur-Claise、Bourgueil、Brizay、Candes-Saint-Martin、Cangey、Chambray-lès-Tours、Chançay、Chanceaux-sur-Choisille、La Chapelle-sur-Loire、Chargé、Cheillé、Chemillé-sur-Indrois、Chenonceaux、Chinon、Chisseaux、Chouzé-sur-Loire、Cinais、Cinq-Mars-la-Pile、Civray-de-Touraine、Coteaux-sur-Loire、Couziers、Cravant-les-Côteaux、La Croix-en-Touraine、Crouzilles、Dierre、Draché、Epeigné-les-Bois、Esvres、Fondettes、Francueil、Genillé、Huismes、L’Ile-Bouchard、Joué-lès-Tours、Langeais(旧自治体の範囲のみ)、Larçay、Lémeré、Lerné、Lignières-de-Touraine、Ligré、Limeray、Lussault-sur-Loire、Luynes、Luzillé、Marçay、Montlouis-sur-Loire、Montreuil-en-Touraine、Mosnes、Nazelles-Négron、Neuillé-le-Lierre、Noizay、Panzoult、Parçay-Meslay、Pocé-sur-Cisse、Pont-de-Ruan、Razines、Restigné、Reugny、Rigny-Ussé、Rivarennes、Rivière、La Roche-Clermault、Rochecorbon、Saché、Saint-Avertin、Saint-Benoît-la-Forêt、Saint-Etienne-de-Chigny、Saint-Germain-sur-Vienne、Saint-Martin-le-Beau、Saint-Nicolas-de-Bourgueil、Saint-Ouen-les-Vignes、Saint-Règle、Sainte-Maure-de-Touraine、Savigny-en-Véron、Savonnières、Sazilly、Seuilly、Souvigny-de-Touraine、Tavant、Theneuil、Thilouze、Thizay、Tours、Vallères、Véretz、Vernou-sur-Brenne、Villaines-les-Rochers、Vouvray
・ロワール=エ=シェール県(Loir-et-Cher)
Angé、Blois、Chailles、Châteauvieux、Châtillon-sur-Cher、Chaumont-sur-Loire、Chémery、Chissay-en-Touraine、Choussy、Le Controis-en-Sologne(旧自治体ContresおよびThenayを含む)、Couddes、Couffy、Faverolles-sur-Cher、Mareuil-sur-Cher、Méhers、Mesland、Meusnes、Monteaux、Monthou-sur-Bièvre、Monthou-sur-Cher、Montrichard Val de Cher、Noyers-sur-Cher、Oisly、Pontlevoy、Pouillé、Rilly-sur-Loire、Saint-Aignan、Saint-Georges-sur-Cher、Saint-Julien-de-Chédon、Saint-Romain-sur-Cher、Sassay、Seigy、Soings-en-Sologne、Thésée、Valaire、Valencisse(旧Chambon-sur-CisseおよびMolineufを含む)、Vallières-les-Grandes、Valloire-sur-Cisse(旧Chouzy-sur-Cisseを含む)、Veuzain-sur-Loire(旧Onzainを含む)
b) 地理的補足名称「Amboise」
この名称に該当するワインのブドウ収穫、醸造、製造、熟成は以下の自治体(2024年版公式地理コードに基づく)で実施されなければならない:
- アンドル=エ=ロワール県:
- Amboise(アンボワーズ)
- Cangey(カンジェ)
- Chargé(シャルジェ)
- Limeray(リムレ)
- Mosnes(モスヌ)
- Nazelles-Négron(ナゼル=ネグロン)
- Pocé-sur-Cisse(ポセ=シュル=シス)
- Saint-Ouen-les-Vignes(サン=トゥアン=レ=ヴィーニュ)
- Saint-Règle(サン=レグル)
- ロワール=エ=シェール県(以下の地理的制限付き):
- Chaumont-sur-Loire(ショーモン=シュル=ロワール):D751道路の南、およびリリー=シュル=ロワール境界から「la Métairie」と「la petite Goutechalière」集落間を経てロワール方面へ流れる谷筋の西側
- Rilly-sur-Loire(リリー=シュル=ロワール)
c) 地理的補足名称「Azay-le-Rideau」
以下のアンドル=エ=ロワール県の自治体で、ブドウの収穫、醸造、製造、熟成が行われること:
- Artannes-sur-Indre(アルタンヌ=シュル=アンドル)
- Azay-le-Rideau(アゼ=ル=リドー)
- Cheillé(シェイエ)
- Lignières-de-Touraine(リニエール=ド=トゥレーヌ)
- Rivarennes(リヴァレンヌ)
- Saché(サシェ)
- Thilouze(ティルーズ)
- Vallères(ヴァレール)
d) 地理的補足名称「Chenonceaux」
次の自治体で収穫、醸造、製造、熟成が行われること:
- アンドル=エ=ロワール県:
- Athée-sur-Cher(アテ=シュル=シェール)
- Bléré(ブレレ)
- Chenonceaux(シュノンソー)
- Chisseaux(シソー)
- Civray-de-Touraine(シヴレ=ド=トゥレーヌ)
- La Croix-en-Touraine(ラ・クロワ=アン=トゥレーヌ)
- Dierre(ディエール)
- Francueil(フランキュイユ)
- ロワール=エ=シェール県:
- Angé(アンジェ)
- Châteauvieux(シャトーヴュー)
- Châtillon-sur-Cher(シャティヨン=シュル=シェール)
- Chissay-en-Touraine(シッセ=アン=トゥレーヌ)
- Couffy(クフィー)
- Faverolles-sur-Cher(ファヴロル=シュル=シェール)
- Mareuil-sur-Cher(マルイユ=シュル=シェール)
- Meusnes(ムーヌ)
- Monthou-sur-Cher(モントゥ=シュル=シェール)
- Montrichard Val de Cher(モントリシャール・ヴァル・ド・シェール)
- Noyers-sur-Cher(ノワイエ=シュル=シェール)
- Pouillé(プイエ)
- Saint-Aignan-sur-Cher(サン=テニャン=シュル=シェール)
- Saint-Georges-sur-Cher(サン=ジョルジュ=シュル=シェール)
- Saint-Julien-de-Chédon(サン=ジュリアン=ド=シェドン)
- Saint-Romain-sur-Cher(サン=ロマン=シュル=シェール)※2011年5月19日付国家委員会の承認部分のみ
- Seigy(セイジィ)
- Thésée(テゼ)
e) 地理的補足名称「Mesland」
以下のロワール=エ=シェール県の自治体に限る:
- Mesland(メラン)
- Monteaux(モントー)
- Valencisse(ヴァランシス):旧Chambon-sur-CisseおよびMolineuf含む
- Valloire-sur-Cisse(ヴァロワール=シュル=シス):旧Chouzy-sur-Cisse含む
- Veuzain-sur-Loire(ヴゾワン=シュル=ロワール):旧Onzain含む
f) 地理的補足名称「Oisly」
ロワール=エ=シェール県で以下の自治体:
- Chémery(シェムリー)
- Choussy(シュッシー)
- Le Controis-en-Sologne(旧ContresおよびThenay)
- Couddes(クッド)
- Méhers(メエール)
- Oisly(ワズリィ)
- Sassay(サセー)
- Soings-en-Sologne(ソワン=アン=ソローニュ)
- Saint-Romain-sur-Cher(サン=ロマン=シュル=シェール):2011年5月19日付で承認された区域のみ
V. – ブドウ品種(Encépagement)
1. – 使用品種(Encépagement)
◉ AOC「Touraine」
■ 白ワイン(vins blancs)
- 主要品種(cépage principal):ソーヴィニヨン・ブラン(sauvignon B)
- 補助品種(cépages accessoires):
- ソーヴィニヨン・グリ(sauvignon gris G)
- 「適応を目的とした有望品種(variétés d’intérêt à fin d’adaptation)」:
- フロレアル(floréal B)
- メスリエ・サン=フランソワ(meslier Saint-François B)
- オルボワ(orbois B)
- シュナン・ブラン(chenin B)
※上記の品種については、INAO、ODG(統括組合)、および関係業者との間で、2024年2月6日に承認された「枠組み協定(convention cadre)」に準拠した契約書の締結が前提となる。
■ 赤ワイン(vins rouges)
a) 一般規定(disposition générale)
- 主要品種:コット(マルベック)(cot N)
- 補助品種:
- カベルネ・フラン(cabernet franc N)
- カベルネ・ソーヴィニヨン(cabernet-sauvignon N)
- ガメイ(gamay N)
- ピノ・ノワール(pinot noir N)
- 「適応を目的とした有望品種」:
- ピノー・ドニス(pineau d’Aunis N)
- グロロー(grolleau N)
※これらも同様に、2024年2月6日の枠組み協定に準拠した契約書の締結が必要。
b) 特別規定(disposition particulière)
トゥール子午線(méridien de Tours)より西側の全てのブドウ畑が対象の生産者に対して:
- 主要品種:
- カベルネ・フラン(cabernet franc N)
- コット(cot N)
- ※カベルネ・フラン単独も可
- 補助品種:
- カベルネ・ソーヴィニヨン
- ガメイ
- ピノ・ノワール
- ピノー・ドニス
- グロロー
(※全て上記と同様、契約が必要)
■ 「gamay」表示のあるワイン(indication gamay)
- 主要品種:ガメイ(gamay N)
- 補助品種:
- カベルネ・フラン
- カベルネ・ソーヴィニヨン
- コット
- ピノ・ノワール
■ 「primeur(プリムール)」または「nouveau(ヌーヴォー)」表示の赤ワイン
- ガメイ(gamay N)のみ
■ ロゼワイン(スティル・スパークリング両方)
- 使用可能品種:
カベルネ・フラン、カベルネ・ソーヴィニヨン、コット、ガメイ、グロロー、グロロー・グリ、ムニエ(ピノ・ムニエ)、ピノー・ドニス、ピノ・グリ、ピノ・ノワール
■ 白のスパークリングワイン
- 使用可能品種:
シャルドネ、シュナン・ブラン、カベルネ・フラン、グロロー、グロロー・グリ、オルボワ、ピノー・ドニス、ピノ・ノワール
◉ 地理的補足名称ごとの規定
■ 「Amboise(アンボワーズ)」
- 白ワイン:シュナン・ブラン(chenin B)
- 赤ワイン:コット(cot N)
- ロゼワイン:
- 主要品種:コット
- 補助品種:ガメイ
■ 「Azay-le-Rideau(アゼ=ル=リドー)」
- 白ワイン:シュナン・ブラン
- ロゼワイン:
- 主要品種:グロロー(grolleau N)
- 補助品種:カベルネ・フラン、カベルネ・ソーヴィニヨン、コット、ガメイ
■ 「Chenonceaux(シュノンソー)」
- 白ワイン:ソーヴィニヨン・ブラン
- 赤ワイン:
- 主要品種:コット
- 補助品種:カベルネ・フラン
■ 「Mesland(メラン)」
- 白ワイン:
- 主要品種:シュナン・ブラン
- 補助品種:シャルドネ、ソーヴィニヨン・ブラン
- 赤ワイン:
- 主要品種:ガメイ
- 補助品種:カベルネ・フラン、コット
- ロゼワイン:
- 主要品種:ガメイ
- 補助品種:カベルネ・フラン、コット
■ 「Oisly(ワズリィ)」
- 白ワイン:ソーヴィニヨン・ブラン
2.- 栽培面積における品種構成比率(Règles de proportion à l’exploitation)
AOC「Touraine」
■ 白ワイン
- ソーヴィニヨン・グリ(sauvignon gris)の割合は20%以下
- 「適応を目的とした有望品種(variétés d’intérêt à fin d’adaptation)」の合計割合は5%未満
補足規定(環境保全目的):
都市部/居住地に隣接する地域において、以下の条件を満たす「フロレアル(floréal B)」種に限り、上記の5%制限から除外される:
- フロレアル種が栽培されている
- 次のいずれかに該当する場所から20メートル未満の距離にある:
- 農業・漁業法典第L253-7-1条に定められた場所
- 同第L253-7条I項に定められた場所
- 同第L253-8条III項に定められた場所
この場合、該当区画は5%制限の対象外となる。
■ 赤ワイン
a) 一般規定:
- 主要品種(コット)の割合は40%以上
b) 特別規定(トゥール子午線より西側のみ):
- カベルネ・フランの割合は90%以上
- 「適応を目的とした有望品種」は5%未満
■ 「gamay」表示のある赤ワイン
- ガメイ(主要品種)の割合は75%以上
地理的補足名称別の比率規定
■ 「Amboise」ロゼワイン
- コットの割合は70%以上
■ 「Azay-le-Rideau」ロゼワイン
- グロローの割合は60%以上
- カベルネ・フラン+カベルネ・ソーヴィニヨンの合計割合は10%以下
■ 「Chenonceaux」赤ワイン
- コットの割合:50%〜90%
- カベルネ・フランの割合:10%〜50%
■ 「Mesland」
白ワイン:
- シュナン・ブラン:60%以上
- ソーヴィニヨン・ブラン:30%以下
- シャルドネ:ソーヴィニヨン以下かつ15%以下
赤ワイン:
- ガメイ:60%以上
- コット:10%〜30%
- カベルネ・フラン:10%〜30%
ロゼワイン:
- ガメイ:80%以上
共通規定(全AOC Touraineに共通)
栽培面積の比率の適合性は、AOCワインを生産する全ての区画の合算面積に基づいて評価される。
VI. – ブドウ畑の管理方法
1° – 栽培様式(Modes de conduite)
a) 植栽密度(densité de plantation)
AOC「Touraine」、および「Mesland」または「Azay-le-Rideau」を補足する場合:
- 最低密度:4,500本/ヘクタール
- 列間の間隔:最大2.10メートル
- 同一列内の株間:0.90メートル以上
地理的補足名称「Amboise」:
- 最低密度:6,000本/ヘクタール
- 列間の間隔:最大1.60メートル
- 同一列内の株間:0.90メートル以上
地理的補足名称「Chenonceaux」:
- 最低密度:5,000本/ヘクタール
- 列間の間隔:最大2.00メートル
- 同一列内の株間:0.90メートル以上
地理的補足名称「Oisly」:
- 最低密度:5,200本/ヘクタール
- 列間の間隔:最大1.65メートル
- 同一列内の株間:0.90メートル以上
b) 剪定方法(Règles de taille)
AOC「Touraine」共通規定:
- 1株あたり最大11芽(yeux francs)
→ 長梢剪定または短梢剪定のいずれでも可 - ただし、生育ステージが11〜12葉段階に達した時点での果実枝の本数が1株あたり11以下であれば、追加で2芽まで許容
「Amboise」専用規定:
- 剪定作業期間:11月1日〜翌年5月1日の間に実施
- 全品種共通で:
- 最大11芽/株
- シンプル・ギヨー剪定(長梢×1〜2)または短梢(ゴブレ、コルドン、ロワイヤ)
- 各短梢(courson)に最大3芽
- いずれの剪定方式においても、果実枝の数は1株あたり11本以下
「Mesland」「Azay-le-Rideau」:
- 最大11芽/株(長梢/短梢いずれも可)
「Chenonceaux」:
- ソーヴィニヨン・ブラン(20年未満の樹齢):最大9芽/株
- ソーヴィニヨン・ブラン(20年以上の樹齢):最大11芽/株
- 黒ブドウ全般:最大9芽/株
「Oisly」:
- 20年未満の樹齢:最大9芽/株
- 20年以上の樹齢:最大11芽/株
c) 誘引と葉面高さ(palissage et hauteur de feuillage)
- 誘引は必須:「立体平面誘引(palissage plan relevé)」方式で実施すること
- 葉の高さ:
- 列間の60%以上の高さを確保すること
- 地面から最低30cm上を葉の下端とし、刈り込み後の安定した上端までの高さを基準にする
d) 区画ごとの最大平均収量(charge maximale moyenne à la parcelle)
呼称・表示 最大平均収量(kg/ha)
Touraine(白・赤・ロゼ・ガメイ) 11,000
スパークリング用ベースワイン(白・ロゼ)11,000
Amboise(白・赤・ロゼ)9,000
Azay-le-Rideau(白・ロゼ)9,000
Chenonceaux(白)10,000
Chenonceaux(赤)9,000
Mesland(白)10,500
Mesland(赤・ロゼ)9,000
Oisly(白)10,000
e) 欠株の割合(Seuil de manquants)
- 枯死または欠損しているブドウ樹の割合は、最大20%までとする。
f) 栽培状態(État cultural de la vigne)
- 栽培区画は健全な栽培状態を維持しなければならない。
- 病害の防除、土壌管理が適切に行われている必要がある。
2° – その他の栽培慣行(Autres pratiques culturales)
- 区画周囲(車道端・未栽培地など)は常時草地化(enherbement permanent)
※ただし、浸食や異常気象による修復時を除く - 全面的な化学除草は禁止
- Chenonceauxのブドウ畑では除草剤の使用を全面禁止
VII. – 収穫、輸送およびブドウの成熟度
1° – 収穫(Récolte)
a) 一般規定
- ワインは十分に成熟したブドウから作られなければならない。
b) 特別規定
- 「primeur(プリムール)」または「nouveau(ヌーヴォー)」の表示を付ける赤ワインに使用するブドウは、手摘みで収穫されなければならない。
2° – ブドウの成熟度(Maturité du raisin)
ブドウの糖分含有量(グルコース+フルクトース)および自然アルコール度(%vol)は、以下の基準を満たさなければならない:
呼称/表示 最低糖度(g/L) 自然アルコール度(%vol)
・AOC Touraine 白・ロゼ 162 10%
・AOC Touraine 赤、または「gamay」表示付き 171 10%
・スパークリング用ベースワイン(白・ロゼ)153 9.5%
地理的補足名称別の基準:
■ Amboise
スタイル 最低糖度(g/L) 最低自然アルコール度(%)
白(辛口) 179 11%
白(中辛・やや甘口・甘口) 212 13%
ロゼ 179 11%
赤 189 11%
■ Azay-le-Rideau
白 162 10% ロゼ 153 9.5%
■ Chenonceaux
白 179 11%
赤 189 11%
■ Mesland
白・ロゼ 162 10%
赤 171 10%
■ Oisly
白 179 11%
VIII. – 収量および若木の収穫開始年
1° – 正規収量(Rendement)
農業・漁業法典 D.645-7条に基づき、以下の収量が規定されている:
呼称・地理的名称・タイプ 正規収量(ヘクトリットル/ヘクタール)
・AOC「Touraine」白 65 hl/ha
・AOC「Touraine」赤、ロゼ、「gamay」表示 60 hl/ha
・AOC「Touraine」スパークリング(白・ロゼ)72 hl/ha
・「Amboise」白 52 hl/ha
・「Amboise」赤・ロゼ 55 hl/ha
・「Azay-le-Rideau」白・ロゼ 55 hl/ha
・「Chenonceaux」白 60 hl/ha
・「Chenonceaux」赤55 hl/ha
・「Mesland」白60 hl/ha
・「Mesland」赤・ロゼ55 hl/ha
・「Oisly」白60 hl/ha
2° – 最大許容収量(Rendement butoir)
これは通常収量を上回る場合の上限であり、同じくD.645-7条に基づく:
呼称・地理的名称・タイプ 上限収量(ヘクトリットル/ヘクタール)
・AOC「Touraine」白 72 hl/ha
・AOC「Touraine」赤、ロゼ、「gamay」表示 66 hl/ha
・AOC「Touraine」スパークリング 78 hl/ha
・「Amboise」白・赤・ロゼ60 hl/ha
・「Azay-le-Rideau」白・ロゼ66 hl/ha
・「Chenonceaux」白66 hl/ha
・「Chenonceaux」赤60 hl/ha
・「Mesland」白70 hl/ha
・「Mesland」赤・ロゼ 67 hl/ha
・「Oisly」白 66 hl/ha
3° – 若木の収穫開始条件(Entrée en production des jeunes vignes)
以下の条件をすべて満たした場合にのみ、若木から得たワインはAOCの表示を名乗ることができる:
- 定植年の7月31日以前に植えられた場合、その2年後の年から収穫が可能
- 現地接ぎ(greffage)を行った場合、7月31日以前に接ぎ木を行っていれば翌年から収穫可能
- 上接ぎ(surgreffage)の場合:
- 上接ぎを行った年の翌年から収穫可能
- ただしその年は、AOCで許可された品種が当該区画の80%以上であることが条件
- それ以降、100%がAOC許可品種でなければならない
IX. – 醸造、熟成、瓶詰、保管に関する規定
1° – 一般規定(Dispositions générales)
ワインは、地域で長年培われた慣習(usages locaux, loyaux et constants)に従って醸造される。
a) 品種のブレンド(Assemblage des cépages)
呼称・表示 規則
・AOC Touraine 白ワイン
主に主要品種から造られる。
適応目的品種の合計割合は10%以下。
・AOC Touraine 赤ワイン
一般規定:
主要品種の割合は50%以上、
補助品種は40%以下。
特別規定:
トゥール子午線の西側に畑がある場合、カベルネ・フランが80%以上。
適応目的品種は10%以下。
・「gamay」表示付き赤
ガメイが85%以上。
・ロゼ(スティル)
単一品種は不可。
いずれの品種も70%を超えてはならない。
・スパークリング白
シャルドネ・シュナンまたはオルボワのいずれかが60%以上。
(※「キュヴェ」とは瓶内二次発酵に用いるワインの総量を指す)
・地理的補足「Amboise」「Azay-le-Rideau」ロゼ
主に主要品種を使用すること。
・地理的補足「Mesland」白・ロゼ
主に主要品種を使用すること。
・地理的補足「Mesland」赤
3品種混醸が必須で、その中で主要品種が最も多く含まれること。
・地理的補足「Chenonceaux」赤
コットの割合は65~80%の範囲内であること。
b) マロラクティック発酵(fermentation malo-lactique)
- 赤ワインはマロラクティック発酵を完了していなければならない。
- リンゴ酸含有量は0.3g/L以下。
c) 分析規格(Normes analytiques)
- 「primeur / nouveau」表示ワイン(瓶詰前のロット):
→ 揮発酸は10.2 meq/L 以下 - スパークリング用ベースワイン:
→ 総亜硫酸含有量は140 mg/L 以下 - 一般ワイン(瓶詰後):
→ 以下の基準に適合:
AOC Touraine 白・ロゼ(辛口)
発酵糖(g/L)総酸(g/L酒石酸換算)4 g/L 以下3.5 g/L より多いこと
白・ロゼ(12.5%以上のアルコール、非補糖)
発酵糖総酸6 g/L 以下発酵糖より1g/L以内の差
赤・gamay・primeur/nouveau
発酵糖総酸2 g/L 以下指定なし
地理的補足「Amboise」
スタイル 発酵糖 総酸(条件)
白(辛口) ≤8 糖との差 ≤2
白(中辛〜甘口) >8〜≤18 糖との差 ≤10
ロゼ ≤6 糖との差 ≤2
赤 ≤2 ―
「Azay-le-Rideau」
| 白(辛口) | ≤9 | 糖との差 ≤2 |
| 白(中辛) | >9〜≤18 | 糖との差 ≤10 |
| ロゼ | ≤4 | >3.5 |
「Chenonceaux」
| 白 | ≤4 | >3.5 または<br>糖との差 ≤1(非補糖・13%以上) |
| 赤 | ≤2 | ― |
「Mesland」
| 白(辛口) | ≤9 | 糖との差 ≤2 |
| 白(中辛) | >9〜≤18 | 糖との差 ≤10 |
| ロゼ(辛口) | ≤9 | 糖との差 ≤2 |
| ロゼ(中辛) | >9〜≤18 | 糖との差 ≤10 |
| 赤 | ≤2 | ― |
「Oisly」
| 白 | ≤4 | >3.5 または<br>糖との差 ≤1(非補糖・13%以上) |
d) 醸造技術と物理的処理(Pratiques œnologiques et traitements physiques)
- ロゼの醸造時、「醗酵中の新酒」に最大15%まで活性炭使用可能(60g/hL)
- 赤ワインには濃縮用の除去技術が認められ、最大10%まで濃縮可
- 以下は補糖(enrichissement)不可:
- Amboise白(糖度>8g/L)
- Mesland白・ロゼ(糖度>18g/L)
- Azay白(糖度>18g/L)
- 「Amboise」「Chenonceaux」「Oisly」ではオークチップ等の木片使用禁止
- 「Amboise」では補糖の限度は1%まで
- ワインは、補糖後の総アルコール度数(%vol)が以下を超えてはならない:
呼称・種類 上限(%vol)
AOC Touraine(白・赤・ロゼ) 12.5%
スパークリング用ベースワイン 13%
Amboise(白・赤・ロゼ) 12.5%
Azay(白)12.5%
Azay(ロゼ)12%
Chenonceaux(白・赤)12.5%
Mesland(全タイプ)12.5%
Oisly(白)12.5%
e) 醸造設備の容量(Capacité de cuverie)
- 各事業者は、前年の収穫で使用した量に見合う醸造容量(タンク容積)を有していなければならない。
f) 醸造所および機器の衛生状態
- 醸造所(床・壁)および醸造機器は良好な衛生状態であること。
g) 発酵温度の管理(Maîtrise des températures de fermentation)
- 白・ロゼ用ワインの仕込みには、50hL超の容器に対して温度管理装置を備えること。
2° – ワインの種類ごとの規定(Dispositions par type de produit)
a) 「primeur(プリムール)」または「nouveau(ヌーヴォー)」表示付きの赤ワイン
- **マセラシオン・カルボニック(炭酸ガス浸漬法)**により醸造される。
b) スパークリングワイン
- 瓶内二次発酵によってのみ製造されること。
- 瓶詰(tirage)後、最低9か月間の熟成を経て**澱抜き(dégorgement)**を行う。
c) 「Amboise」地理的名称付きの白・赤ワイン
- 収穫翌年の4月30日以降まで熟成を行うこと。
d) 「Amboise」「Azay-le-Rideau」のロゼワイン
- 直接圧搾(pressurage direct)法による醸造が義務。
※発酵前に圧搾を行い、果皮との接触を最小限に抑える方法。
e) 「Azay-le-Rideau」の白ワイン
- 収穫年の12月31日まで熟成すること。
f) 「Chenonceaux」の白ワイン
- 収穫翌年の4月30日以降まで熟成を行うこと。
g) 「Chenonceaux」の赤ワイン
- 収穫翌年の8月31日以降まで熟成を行うこと。
h) 「Oisly」の白ワイン
- 収穫翌年の4月30日以降まで熟成を行うこと。
3° – 瓶詰に関する規定(Dispositions relatives au conditionnement)
a) 検査機関に提供すべき情報(lot管理)
瓶詰業者は、**認可された検査機関(organisme de contrôle agréé)**に対し、以下の情報を提出できる状態にしておくこと:
- 農業・漁業法典 D.645-18条に定められた操作記録簿の内容
- 瓶詰前または後(スパークリングの場合は澱抜き時)に実施された分析結果
※これらの分析記録は、瓶詰日または澱抜き日から6か月間保管すること。
b) スパークリングワインの瓶詰について
- ワインは、実際に瓶内二次発酵が行われた同じ瓶で販売されなければならない。
- 例外:販売される瓶が375mL以下または1.5L超の場合は、この限りではない。
4° – 保管に関する規定(Dispositions relatives au stockage)
- 業者は、瓶詰された製品を保管するのに適した場所を確保していなければならない。
5° – 消費者向け販売開始日(Dispositions relatives à la mise en marché à destination du consommateur)
呼称・種類 販売可能となる日付
AOC Touraine スティルワイン 農業・漁業法典 D.645-17条に従う
AOC Touraine スパークリング 瓶詰日から9か月以上経過した後
Amboise ロゼ D.645-17条に従う
Amboise 白・赤 収穫翌年5月15日以降
Azay-le-Rideau ロゼ D.645-17条に従う
Azay-le-Rideau 白 収穫翌年1月15日以降
Chenonceaux 白 収穫翌年5月1日以降
Chenonceaux 赤 収穫翌年9月1日以降
Mesland(全タイプ)D.645-17条に従う
Oisly 白 収穫翌年5月1日以降
X. – 地域との関連性(Lien avec la zone géographique)
1° – 地理的要因(自然条件)
- 対象地域は、パリ盆地南西部のゆるやかに起伏した高原地帯である。
- ロワール川を本流とし、シェール川(le Cher)・アンドル川(l’Indre)・ヴィエンヌ川(la Vienne)がこの地域で合流する水系の要衝に位置している。
- ブドウ畑は100km以上にわたり、谷沿いを中心に展開している(※例外:ソローニュ地区は台地上)。
地理的補足名称との関係:
- 「Amboise」「Mesland」:ロワール渓谷沿いの中心部
- 「Azay-le-Rideau」:アンドル川の谷沿い
- 「Chenonceaux」:シェール川下流の谷
- 「Oisly」:ロワールとシェールの間、東部の台地上
標高と土壌:
- 全体の標高は100〜120m程度
- 使用される区画は、歴史的な栽培エリアをもとに厳密に区画指定されている
- 土壌分類:
- シレックス混じりの粘土と新第三紀の砂:「bournais perrucheux(ブールネ・ペリュシュ)」
- シレックス粘土、石灰質粘土土壌:「perruches」「aubuis(オビュイ)」→ 谷の斜面上
- 古代沖積層の礫土:「graviers(グラヴィエール)」
気候:
- 海洋性気候(大西洋性)だが、トゥール子午線より東では内陸化が進み、
- 降水量:西側で約550mm → 東側で650mm程度
- 寒暖差が大きくなり、より continental 的傾向
2° – 人的要因(歴史と文化)
- 紀元2世紀、アゼ=ル=リドー近郊のCheillé(シェイエ)で古代の圧搾機跡が発見
→ 「Touraine」地域のワイン造りの始まりを示す - 8~12世紀:修道院と教会の影響でブドウ栽培が急成長
- 16世紀:ロワール渓谷にフランス王室が拠点を構える(シャンボール、シュノンソー城など)
- パリ周辺でのワイン生産を制限した「20リュー法(Édit des vingt lieues)」により、Touraineの地位が向上
- リヨン地方からガメイ種(gamay)が導入される
- ロワール川・シェール川などの水運により、貿易・流通が発達
- 主な輸出先:オランダ、イギリス
- 良質ワインは「vin de mer(海のワイン)」として輸送
歴史的文献:
- 18世紀:ブレレ〜シュノンソー周辺にワイン産地が発展
- 1804年(ナポレオン時代)農業調査報告では、「コット(cot)」が主要品種として記載
- 1845年:Comte Odartによる『アンペログラフィー』で、「cot」がシェール・ロット川沿いの主力品種とされる
- 1860年 Jules Guyot:「Cabernet Franc(Breton)」はシノン〜サンムールで主力。
ロワール=エ=シェール県では「cot」「pinot」「meunier」などが優勢と記述
近代の発展:
- フィロキセラ禍(19世紀末)後、接ぎ木技術と共にガメイ・ソーヴィニヨン・ブランが復権
- 1939年:「Coteaux de Touraine」AOCとして初認定
- 1953年:「Touraine」に名称変更。「Azay-le-Rideau」補足名称も追加
- 1955年:「Amboise」「Mesland」が地理的補足名称として承認
- 1985年以降:
- シェール渓谷:コット・ソーヴィニヨン導入
- ソローニュ地区:ソーヴィニヨンを砂地に植栽
- これが**「Chenonceaux(白・赤)」「Oisly(白)」の追加認定(2009年)**へつながる
- 2009年時点:4500haの畑、約800生産者、年間26万hlの生産(60%以上が白ワイン)
3° – ワインの品質と特徴
◉ スティルワイン(Vins tranquilles)
- 白:黄金色、柑橘・トロピカルフルーツ・白い花、爽快なフィニッシュ
- ロゼ:カシス、柑橘、トロピカルフルーツなど繊細で華やかな香り
- ガメイ主体の赤:「primeur/nouveau」または「gamay」表示付き
- チェリー色、赤果実、軽やかで絹のようなタンニン
- カベルネ・フラン主体の赤(子午線以西):ルビー〜ガーネット色、骨格のある構造、赤〜黒果実系のアロマ
◉ スパークリングワイン(Vins mousseux)
- 高い酸味と繊細な果実味
- 長期熟成によりブリオッシュ香が生まれることもある
4° – 因果関係(Interactions causales)
- 水系(ロワール、シェール、ヴィエンヌ、アンドル)と粘土・石灰土壌がブドウ栽培に適し、丘陵斜面に畑が形成された
- ルネサンス期には輸出拠点となり、優良ワインがロワール河口から欧州へ出荷
- 子午線を境に:
- 西:カベルネ・フラン、シュナン
- 東:ソーヴィニヨン、ガメイ、コット
が適応
- 「perruches」「aubuis」などの土壌はソーヴィニヨンに最適
- ガメイはシレックス粘土に適し、軽やかで果実味豊かな赤に
- コットは構造的、カベルネ・フランはしなやかな骨格を与える
5° – 地理的補足名称ごとの特徴
Amboise
- 標高80〜100mの柔らかな白亜質台地
- 各品種に適した多様な地形
- ロゼ:果実味と酸味
- 赤:タンニン構造と赤果実アロマ
- 白:辛口〜中甘口、熟成による香りの複雑さ
Azay-le-Rideau
- ロワールとアンドルの間、温和な気候
- グロローとシュナンが砂礫地に適応
- ロゼは直接圧搾で果実感重視
- 白はミネラルでエレガント、やや甘みを帯びることも
Chenonceaux
- シェール川両岸のシレックス豊富な斜面
- 白:ハーブ、花、柑橘、ナッツ系の複雑な香り
- 赤:黒果実とタンニン構造、8月末までの熟成で柔らかさが加わる
Mesland
- ロワール右岸の台地、シレックスと新第三紀の砂が特徴
- 高い寒暖差と地勢が早熟系品種に有利
- 赤・ロゼはガメイ主体で赤果実系の濃い香り
- 白は柑橘・花(菩提樹、ヴァーベナ)などの華やかで爽やかなアロマ
Oisly
- ソローニュの心臓部、サブドライ気候
- 砂・礫・ファルン(貝化石石灰)からなる台地
- ソーヴィニヨン単一で造られ、柑橘・白い花の香りと酸の張り
- 熟成によって複雑味が向上
UNESCO文化遺産との関連:
- 「王たちに詠われたブドウ畑と谷」
- 生きた文化的景観として継続されるブドウ畑の営みが、ロワール渓谷の世界遺産登録(ユネスコ)に寄与した。
XI:移行措置(Mesures transitoires)
1° – 補足名称の削除に伴う経過措置
次の補足名称は、本仕様書の発効により廃止された:
- Bléré(ブレレ)
- Loches(ロシュ)
- Valençay(ヴァランセ)
- Vouvray(ヴーヴレ)
- Bourgueil(ブルグイユ)
- Saint-Nicolas-de-Bourgueil(サン=ニコラ=ド=ブルグイユ)
これらに関しては、該当ワインの最終収穫年から2年以内であれば、ラベル等での使用が許容される(在庫販売などを想定)。
2° – 接ぎ木や区画再編等に関する猶予措置
以下のケースでは、新規植栽区画の品種構成が規定に適合していなくても、一時的にAOC表示が認められる:
- **接ぎ木または区画の再構成(réaménagement parcellaire)**が、
- 既存の認可品種の維持または
- 生産者の運営継続上やむを得ないと認められる場合に限り
この場合、最大で5年間の猶予が与えられる(ODGおよびINAOの承認が必要)。
3° – 除外区画の取り扱い
- 本仕様書でAOC区域から除外された区画に関しては、除外年の前年の収穫までに得られたワインについてのみ、AOC表示が許容される。
4° – 「Mesland」地区の剪定方法変更に関する特例
- 既に旧ルールで剪定されたブドウ株については、旧規定に則ったままで2026年ヴィンテージまでの収穫が認められる。
5° – 「primeur / nouveau」表示の継続使用
- 旧規定で認可されていた「primeur」または「nouveau」表示のガメイ主体赤ワインについては、以下の条件で使用が継続できる:
- 醸造条件が現在の規定(マセラシオン・カルボニックなど)を満たすこと
- 表示規則(糖度、アルコール度など)に適合していること
XII:表示ルール(Présentation et étiquetage)
1° – 一般表示要件(Mentions obligatoires)
以下の表示が、ボトルまたはワイン容器の主要視認面に明記されなければならない:
- 原産地呼称(Appellation d’Origine Contrôlée)
表記例:「Touraine」「Touraine + 補足地理的名称」など
補足表示の規則:
a) 「primeur」または「nouveau」
- 赤ワインでかつガメイを主体にしたもののみ使用可能
- 「Touraine」または「Touraine gamay」の表記と併記可
例:「Touraine gamay nouveau」
b) 補足地理的名称の使用
- 「Amboise」「Azay-le-Rideau」「Chenonceaux」「Mesland」「Oisly」などの補足地理的名称を表示する場合:
- ラベル上に「Touraine」の表記と同等の大きさで明記すること
- 例:「Touraine Amboise」→「Touraine」および「Amboise」の文字サイズは同じでなければならない
2° – 任意表示(Mentions facultatives)
任意で記載できる要素として以下が挙げられる:
- 品種名(cépage)
※ただし、使用品種が全体の85%以上であることが条件 - 辛口/甘口等の味覚表示(sec, demi-sec, moelleux, douxなど)
→ 甘口区分に基づく分析規格を満たす必要あり
3° – 表示禁止事項(Mentions interdites)
- 「château」「clos」などの表示は、以下の条件をすべて満たす場合に限って許可される:
- 表示名称が実際の地名または歴史的名称であること
- 使用者が当該名称の地権者または正当な使用者であること
- 表示が誤認や誤解を招かないこと
- **それ以外の地名表示(lieux-dits)**についても、ODGの承認とINAOの審査を経ることが求められる。
4° – 包装・容器のルール(Conditionnement)
a) 容器容量:
- 許容されるボトル容量は法令で定められた範囲(例:750ml、375mlなど)
b) スパークリングワイン特例:
- スパークリングワインに限り、375mL未満または1.5L超の容器での澱抜き後のリパッケージが可能
CHAPITRE II – 申告義務(Obligations déclaratives)
1° – 栽培者・生産者の登録
- ワインの栽培・醸造・販売に関わるすべての者は、農業・漁業法典第R.665-5条に従って所定の登録(déclaration)を行わなければならない。
2° – 検査機関への情報提供
- 生産者は、**ODG(組織団体)および認可検査機関(organisme de contrôle agréé)**に対して、以下の文書または情報を提出しなければならない:
- 栽培区画のリストおよび図面
- 醸造所の所在地・設備構成
- 各ヴィンテージの生産量・販売量
- 瓶詰記録、補糖・分析結果などの技術情報
CHAPITRE III – 主な検査ポイントおよび評価基準(Points principaux à contrôler et éléments à justifier)
この章では、AOC Touraineのワインが仕様書に適合しているかを判断するための主なチェック項目が列挙されています。
1° – 栽培・品種関連
チェックポイント 評価基準
栽培区域 指定された地理的区域内にあるか
品種構成 規定の主要/補助品種のみか、割合も適合しているか
栽培密度 指定された密度以上(例:4500本/ha)であるか
剪定方式 最大芽数11、種別ごとの制限を守っているか栽培方法誘引、高さ、除草剤使用制限を遵守しているか
2° – 収穫・成熟・収量関連
チェックポイント 評価基準
糖度・アルコール度 各スタイルに応じた最低基準を満たしているか
正規収量 各タイプごとの収量上限(例:Touraine白=65hl/ha)
若木の使用 初年度からの収穫時期を守っているか(2年目以降など)
3° – 醸造・熟成・瓶詰関連
チェックポイント 評価基準
醸造方法 スパークリングは瓶内二次発酵か等
熟成期間 地理的補足名称に定められた最低熟成を経ているか
分析値 発酵糖・総酸・亜硫酸等の基準を満たすか
補糖の有無・程度 非許可スタイルでの補糖がないか
木片使用 禁止されたワインで使用していないか(例:Oisly)
マロラクティック発酵 赤ワインにおいて実施済みか(リンゴ酸0.3g/L以下)
4° – ラベル・容器・販売
チェックポイント 評価基準
表示内容 呼称名・補足地名のサイズ、primeur表示など適正か
瓶詰タイミング 熟成期間を経た後に販売されているか
検査証明 要請時に分析資料を提示できるか
参考文献
「CDC – Touraine.pdf」(2025年4月24日官報掲載)「トゥーレーヌ」
https://www.vintouraine.com/wp-content/plugins/download-attachments/includes/download.php?id=1920
おわりに
いかがでしたでしょうか。
これを読んで楽しめる人は多分変態だと思いますが、プロが辞書的に使うニーズはあると思います。
参考になったら嬉しいです。
ありがとうございました。
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